「ふざけんなよ、納得いかねーし」
「ふざけてなんかない。真剣だよ」
「だったらよけい納得いかねーっての!」
無意識に声をあらげていた。
ふたりきりの廊下に反響する怒声は、まるで自分のものじゃないみたいだった。
「お前ってほんとに何もわかってないんだな。俺がどんな気持ちで今までお前のこと見てきたと思ってんの?」
まなみの瞳に動揺の色が浮かんだ。
怖がらせてる。
そう思ったのに、止められなかった。
「好きになっても叶わないなら、いっそ出て行ってくれって思ったこともあったよ……」
あふれてくる言葉に翻弄されながら、俺はまなみと初めて会った日のことを思い出していた。
くだらないけんかをして過ごした一年半。
兄貴が出て行った秋の日のこと。
まなみを守ることだけで、自分を満足させていた日々。
いつだって、まなみの心には兄貴がいて……。
「けど、やっぱり会いたいんだよ」
とにかく会いたかった。
とにかく、そばにいたかった。
「男らしくあきらめるとか、できなかったんだよ。とにかくお前の顔が見たいんだよ」
振り絞るように俺は言った。
まなみは何も言わずにただ聞いていた。
俺の重たい言葉を、傷つきながら一身に受け止めてくれていた。



