まなみが帰った後、少し客の減った店内で、俺はため息をついた。
「詩織、お前さあ。なんであんなこと言い出したわけ?」
「だってケイが望んでるっぽかったから」
あっけらかんと言われると、確かにそうなのかなあ、なんてちょっと納得してしまう俺。
そういえば、なんでまなみ、ひとりで店に来てたんだろう。
友達カップルは?
やっぱりお邪魔虫状態が気まずくて、抜け出してきたんだろうか?
……もし、そうだとすれば、今夜こうして会えた偶然に俺は感謝する。
別にまなみは俺と会えて嬉しいなんて思っていないだろうけど。
少なくとも俺にとっては、まなみをひとりきりにしなくてすんだわけだから。
翌朝、詩織の提案をトオルに話したところ、予想以上の大賛成だった。
「まなみちゃんって、例のまなみちゃんだろ!?一度会ってみたかったんだよなー。楽しみ!」
なんて感じですっかり盛り上がるトオル。
10時頃、ゲレンデでまなみたちと集合した。
まなみの友人のカップルはとても気さくで、特に女の子の方は何かと俺に話しかけてくれた。
全員が同い年のせいか、初対面のぎこちない空気はすぐに消えた。
高校時代、クラスで騒いでいたときのような雰囲気だ。
「おいおい、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
と俺に耳打ちするトオル。
その視線の先にいるのは、もちろんまなみだ。
白いスキーウエアに身を包んだ彼女は、普段よりさらに可愛く見える。
なんだか俺は嬉しくなって、得意げに答えた。
「だろ?」
「なんでお前が偉そうに自慢してんだよ」
トオルにひじでつつかれて、俺は派手に雪の上に尻もちをついた。
それを見たまなみの笑い声が、ゲレンデに響いた。



