「彼女の前で、そういうことはやめた方がいいんじゃない?」
一瞬、何を言われたのか理解できなくて、俺は目をパチパチさせた。
「は?……彼女?」
「詩織さん」
羞恥心で熱くなった体が、すーっと冷めていくのがわかる。
悪気のない勘違いって、時としてすごく人を傷つけるものだ。
「あいつは、そんなんじゃないし」
「でもわざわざ詩織さんに会うために、長野まで来たんでしょ?」
「だからぁ……言っただろ?ボードのために来たんだって。それに俺、男のツレと来てるからな」
なんだか言えば言うほど言い訳っぽく聞こえて、悲しくなる。
いっそのこと本当のことが言えればいいのに。
お前が心配で来たんだよって、言えればいいのに。
しばらくすると詩織が戻ってきた。
「まなみちゃんたち、明日はどうするの?」
すっかり打ち解けた口調でたずねる詩織。
「特に決めてないですけど」
「じゃあさ、私たちと一緒に滑らない?」
……はあ!?
何を言い出すんだこいつ。
「ね?それがいいよ。私も昼間はフリーだしさ。もうひとりトオルっていう奴がいるんだけど、そいつも大勢で遊ぶの大好きだし」
「え、でも……」
まなみがうかがうような視線で俺を見る。
俺の答えを求めている目だ。
「俺は、どっちでもいいよ」
煮え切らない答えを返すと、詩織は「じゃあ決定!」とひとりで盛り上がった。



