次の日からかんかん照りの真夏が始まった。

夕べ降った雨の気配すらないほど乾き切った空、地面。

「琴音。終業式くらい遅刻ギリギリじゃなく用意なさい。」

いつもより少し早めのママの声。

でも私は起こされる前から目が覚めていて、ずっと詩帆の二枚目のアルバムを聞いていた。

このアルバムの中の『太陽の匂い』が最近のお気に入り。

少し寒い季節の歌が多い詩帆では珍しい夏を歌った曲。

「うん。今日も一段と太陽の匂いが濃い……気がする。」

すぅっと鼻から息を吸うと、ちょっと生暖かい空気が身体中を駆け巡る。

冬とは全然違う。

春とも何だか少し違う夏の匂い。

私達の最後の暑い季節が始まったんだ。