きっとこれは、伸一君と喋ることが出来たから。 伸一君とあんなにまともに喋ったのは、いつ以来だっけ…。 一瞬瞼を伏せて。 思い出すのは、“あの頃”のこと。 そう。 伸一君と喋ることができた、“あの頃”――。 もう“あの頃”には戻れない。 そんなことは分かりきっている。 だけど、どうしても。 過去に縋りたいと思ってしまう自分がいる。 それがなんだか情けなくて、悲しかった……。 .