光を背負う、僕ら。―第1楽章―

すると伸一はうらやましそうな顔をして、「いーなぁ」と言った。




「伸一は持ってねーのか?」




達也の問い掛けに、伸一は少し残念そうに言った。




「それがさ、持ってないんだよな。佐奈みたいに続きが気になって買おうと思ったんだけど、……小遣いがなくてさ。」




苦笑いする伸一につられて、あたしも思わず苦笑いする。



隣りに座る達也も、あたしと同じだった。



とても読みたそうにあたしが持つ本を見る伸一を見ていたら、ある一つの考えが芽生えた。



でもそのことを告げるには、自分が決意した思いを早くも打ち破ることになる。



だけどついさっきまでのあたしとは違い、今はただ、浮かんだ考えだけがあたしを動かした。




「…よかったらこれ、貸そうか?」




開いていた本を閉じて、伸一に向かって差し出す。



すると伸一は、もともとパッチリとした目をさらにパッチリと開き、驚いた表情になった。




「えっ、でも…。そんなの悪いだろ?」




遠慮がちに言う伸一に、さらにズイッと前に本を差し出す。




「全然気にしなくてもいいよ。だって、すごく読みたいんでしょう?」