僕らの背骨


エレベーターが20階に着くと、真理はその一流ホテルのような空間に10㍍程度の間隔で設置された二つのドアに気付いた。

「もしかして…、1フロアに二世帯だけ!?」
外観から予想して、そのマンションは四世帯は入るであろうフロアの広さで、真理がわさわざ見え透いたお世辞を言うまでもなく、そのマンションは充分過ぎる程豪華だった。

「ううん、最上階は一世帯だけ。入口が一つだけだと不便だからドアが二つあんの。」
紗耶は煩わしそうに言った。

「…………。」
真理はもう何の言葉も出なかった。

「やだ、汚ない…。」
ドアを開けると紗耶は玄関を見ながら小声でそう漏らした。

「はっ?どこが?」
真理はワックスで光り輝いた大理石の玄関を見回しながら、率直に紗耶の主張を批判した。

「靴とか出てるとなんかムカツク…。たまに掃除の三上さんが片付けないで帰っちゃうんだよね…。マジ仕事しろって感じなんだけど。」
紗耶は自分の靴を大きな靴箱にしまいながら言った。

「…そ、"掃除の三上さん!?何それ?紗耶んち使用人がいんの!?」
真理は紗耶の予想以上の金持ちっぷりに呆れ、口をぽっかりあけたまま言った。

「…"使用人"って何?三上さんはただの掃除のオバサン。」

「ただのって…、普通の家には掃除のオバサンは付いてないよ!!もしかして…、"料理の鈴木"さんとかもいんの?」
半分冗談で真理は言った。

「えっ?なんで"鈴木さん"の事知ってんの?」
紗耶は驚いた様子で真理に言った。

「はぁ!?」
真理は目を見開いて紗耶に顔を近づけながら言った。

「ウソ、ウソ!!(笑)"鈴木さん"なんていないから!掃除の人だけだよ。ちょっと広過ぎるからママ一人だと毎日掃除するのが大変なんだって。」
紗耶は言った。

「ふ、ふ〜ん…。」
それでもなんだか納得のいかない真理だった。


玄関は大きな吹き抜けになっていて、天井からは大きなガラス越しに夜空が一望出来た。

そして真正面にある舞台セットのような白い階段は、マンション世帯には立派過ぎる程の大きさで、まるで貴族の家のようだった。