人混み。

明るく光る屋台。



大学の近くの商店街のお祭りは、いつもに増して賑わっていた。


綿菓子をかわいらしく頬張るぶりっこの女子中学生や、焼そばに群がる男子高生。


小学生の集団は金魚すくいで盛り上がっている。



今日は、このお祭りに、橋本ミミが参加するという噂を聞き付けて、やってきた。


鶴見ミツルの親戚が、商店街でコンビニを経営しているらしく、リス研有志で店頭に立ってフランクフルトを売る仕事を手伝うのだそうだ。


沼袋部長が仕入れた情報によると、売り子の手伝いと言ってもたいしたことはしなくて、忙しい時間以外はほとんど遊んでいるらしい。


コンビニ周辺で張っていれば、かならずミミに会える。


「ミミ助に会うだけなのに、大変ですね」

ピンクの浴衣を着た目黒さんが言う。


「さりげなく誘っても断られちゃうんだから、しょうがないじゃないですか」

同じくピンクの浴衣を着た平田が言う。

お姉さんの浴衣を借りたらしいのだが、まるでおかまだ。

よく見ると、唇にはうっすらとグロスを塗っている。


「平田が、わざとらしく気持ち悪く誘うから、断られちゃうんだよ」


「ホテルのプールに誘っただけですよう」


「ホテルっていうところが気持ち悪いんだよね」


「ちょっとミチコさん、いかがわしいホテル想像しないでください」


「でも……ねえ」


「熱海旅行も断られましたしねえ」


「平田と二人っきりの熱海旅行なんて絶対無理!」


「わっ私は、OKですよ!!」

顔を真っ赤にして目黒さんが言う。


「あ!来ましたよ!」

平田が言う。

目黒さんの大胆発言は、聞こえなかったみたいだ。


「ミミさん!?」


「いや。オード卵ですね……山嵐ノゾミ様も一緒ですね」