シャワーを浴びてリビングに行くと、弟は一人でビールを飲んでいた。


「こら、未成年!」


「ノンアルコールビールだぜ」


「何のために!?」


「たまには飲みたい時もあるんだよ。ほらっ、アネキも飲む?」


「あ、ありがとう」


私も飲みたい気分だ。


でも、さすが、アルコールが入っていないだけあって、ちっとも酔えなかった。

橘は、私に何も聞かなかった。


ただ、静かに、二人でノンアルコールビールを飲み続けた。



「オレ、料理に興味あるんだよね」

弟が言った。


「あ、そうなの?」


「これから、たまに、婆のところに行って、料理習おうと思う」


「へえ」


「ま、仕事が忙しいから、たまにだけど」


「仕事って言うか、あんた高校は大丈夫なの?単位たりてる?」


「アネキ、今は夏休みだぜ。夏休みが終わったら、仕事は減らすよ」


「そう」


「なんか、アネキおかしくね?何があったんだよ」


「うん……ちょっとね」


「話したくないなら別にいいけど」


「落ち着いたら話すよ」



誰にも何も話したくなかった。


橘は、そのまま黙って自分の部屋に行ってしまった。