ハジメがフルフェイスの正体。


沼袋部長と私を襲った犯人。


涙が止まらなかった。



どじょうとあひるとハムスターを盗み、高校生相手にカツアゲまでする。


人身売買、と、ししゃもさんは言った。


あの木箱が何よりの証拠だ。


平田はハジメに食われてしまったのだろうか。


まさか、そんなはずはない。


私は自分に言い聞かせた。


ハジメがそんなことをする理由はわからない。


でも、ハジメがフルフェイスの正体だという事実は変えられない。




泣きながら家に戻ると、ちょうど弟も同じタイミングで帰ってきたところだった。


ふさふさの茶髪に白いスーツが毒々しい。

青白い顔をした弟は、私を見て、驚いたように言った。


「アネキ、その顔どうしたの!?」



「ころんだ」


「嘘つけ。鼻が真っ黒だぜ」


「え!?」



洗面所で顔を見てみると、確かに鼻が真っ黒だった。

山で倒れた時に泥が付いたのだろう。


目は泣き腫らして真っ赤。

化粧もすっかり崩れている。

ひどい顔だ。