「ミチコ!」



ふいに声をかけられた。



振り向くと、吉川ヨシオがいた。


「ミチコ、何やってるの?こんなところで?」



「なっ、なんでもない。なんとなく散歩!」



なんとなく、ハジメのことは誰にも話したくなかった。



「ふうん」


「よ、ヨシオは何してるの?こんなところで」


「缶集め」



見ると、ヨシオは、缶の詰まった大きな袋を持っている。



「へえ。意外。ヨシオ、ボランティアとかするんだ。偉いね」


私が言うと、ヨシオは照れ臭そうに「まあな」と言った。




「じゃあ、私、散歩してくるね。健康のために!」


「じゃ、またな」



ヨシオと別れて私は山に入った。