「彼…可愛いね」

光は右手で私の腕を掴み、
目を輝かせながら言う。

左手は
肩まである漆黒の艶やかな髪を
掻き上げている。


   岸田 ヒカリ。

入学式の時、隣の席だった事から
話すようになった。

彼女とは
そんなありきたりな出会い。

一重で切れ長の目、細い輪郭。

大人な雰囲気をかもしだしている彼女。



学校では自然とヒカリと行動しているんだけど。


本当だったら
“親友”といわれる仲に
なっていてもおかしくないと思う。


───だけど、
私はまだ彼女に心を開けていない。


なかなか、
人に自分をさらけ出せない事と
人と接する事が苦手なのが
私の欠点で。


いつも偽の自分を作ってしまう。


「そ…だね…」


「心美?」

ピカリは細い目を大きくして
こちらを見つめていて。





私はちらっと視線をリクに向ける。


160センチほどの小柄な体型。

茶髪の襟足が長めの、
ふわっと空気感のある髪型。


緊張のあまり落ち着かない様子。

童顔な顔、
くりくりとした大きな目が
やっぱり印象的。


…………ネクタイ曲がってるし。
確かに可愛いかも………。

自然と笑みが零れる。



「宇津木の席は────」

その時だった。


「あ!心美ちゃん!」

担任の柏山の低い声が
リクによって遮られ。

彼は満面の笑みで私に近づいてきたのは。




     はい?

────リクの奴、
ありえないんですけど。