モモちゃんと叔母さんが病室を出て行った後、その場には家族だけが残された。

「知らなかったよ。
渚があの日のことを、ちゃんと覚えていたなんて…」

「まだ小さかったから、覚えてるわけない、って決めつけてたもんなあ…」

しみじみとつぶやくふたりを前に、私の胸にはなんとも言えない感情だけが残された。

ひとり勝手に傷ついて、自ら選んだ15年という暗い人生。

もっと心を開けたら、あの日の苦しみを冗談めかして訴えられたら、私の過去はもっと明るく輝けたのかもしれない。