「…!」

碧をからかった子供がいきなり現れた和哉の拳をあごに受けてもんどりうった。

「やめて!お兄ちゃん」

怒りで頬を赤く染め倒れた相手を踏みつぶさんとする和哉に後ろからしがみついた碧は必死で叫んだ。

いくら和哉が小柄で相手の方が大きいといっても、中学生が小学生にいきなり殴りかかったとなっては分が悪い。

このような事は今回が初めてではなく、その都度、肇と夏美が相手の家に謝罪に出かけている。

しかし何時も二人は和哉を責めずそれが逆に碧自身が責められているような気がしてつらい思いをした。

後ろに転倒した少年は学生服姿の和哉がいきなり殴りかかってきた事に恐怖を感じ激しく泣き出した。

「ごめんね・・・痛かった?許してね・・・」

ハンカチをとりだし土を払おうとした碧の手を払いのけた少年は恐ろしい形相でにらみつけながら走って逃げた。

「あーあ・・・またお兄ちゃん怒られちゃうよ。我慢しなきゃ」

「碧が苛められてるのに我慢なんか出来るか。いいよまた父さん達が謝りに行ってくれるさ」

平然と言い放つ和哉の双眸に普段の優しさからは見られない気性の激しさが見受けられ、碧は身震いした。

(お兄ちゃんて、普段はあんなにおとなしいのに・・・)

「さ、帰るぞ碧」

そういって振り返った和哉は普段どおりの物静かな少年に戻っていた。