「あの…お昼の続きなんだけど…」



『一緒には行かねーよ』



間髪入れずに祐太が痛いところを突く。



「うっ…そ、それね、なんか、あの、なんであんなこと言ったのか、自分でもわかんなくて…」



噛みまくりで余計に動揺したけど、小さな声で、



「…あの発言は忘れて」



と続けた。



祐太は黙っていた。



顔が見えないから、どういう沈黙なのかわからなかった。



でも私には、祐太の反応を待つよりも先に、言わなければいけないことがある。



それを言うために、電話したんだから。



私は、怒っている祐太の顔を想像して、びくびくしながら言った。



「お昼は、ほんとにごめんね。私、金曜日は祐太と映画に行きたい」



ずっと頭の中で繰り返していたせいか、学芸会のセリフみたいに棒読みになってしまった。



でも、ちゃんと言えた。



祐太は、さらにしばらく沈黙してから、



「そう言ってくれると思ってた」



と、柔らかく言った。



想像の中の祐太の顔は、もう怒っていなかった。