「…本気…って…」



『ウジェーヌは夏休みが終わったらフランスに帰るんだよ。本気になったら、その分、怜奈もウジェーヌも、つらい思いするだけだよ』



「ちょ、ちょっと待って、なんのこと?」



『……』



沈黙のかわりに、紗江子のため息が聞こえた。



まるで耳に息を感じるようだった。



せっかく元通りになっていたリズムが、また狂う。



「紗江子…」



『…気づいてないの?』



気づいてるんでしょ、というニュアンスで、紗江子は言った。



私は、



なんのこと言ってるのかわからない、



と、とぼけることもできた。



でも、しなかった。



紗江子には、嘘をつきたくなかったから。