お茶を飲んでおかゆを食べると、体は一気に軽くなった。念のため風邪薬も飲んでおく。

 せっかく実家に帰って来たのにほぼ寝込んでいたのは残念だけれど、いいように考えれば看病をしてもらえたからよしとしよう。

 そう思えるのは、あの夢の記憶があるからだ。

あの七日間がなければ、わたしは今までのように悪い風に受け取ったままだったかもしれない。


 バイトも明日から始まるし、今日マンションに帰る、と言うとめちゃくちゃ怒られてしまったけれど、それを無視して準備を始めた。

今から帰れば夕方にはマンションに着くだろう。

「あんたは最近都合が悪くなると無視するんだから」

 母はぶつくさと文句を続けていて、その台詞をわたしは幸登にしょっちゅう感じていたなあと思い出す。

そんなところも影響されていたなんて、これから幸登を責められない。


 スマホを充電して電源を入れたけれど、幸登からはひとつも連絡が入っていなかった。今まで一日一回は連絡を入れていたんだから、音沙汰がないことに少しくらい心配しているかな、と思ったのに。

 本当に、鈍感だ。

 でも、それが幸登だ。この〝ムカつく〟は、好きだからの延長線上にある。好きじゃなければこんなこと気にしない。


 帰ったら文句のひとつ、ふたつ、いやみっつくらいは言おう。そう心にメモをした。そして、着信履歴から紗耶香の名前を表示して通話ボタンを押した。

 二コール目に『はーい』と明るい声が聞こえてきた。

「紗耶香? 今大丈夫? ちょっと、聞きたいことがあって」
『なに改まってー』


 こんなことを聞くのはおかしいかもしれない。

けれど、確かめたいと思った。会話に出さないほうがいいだろうと今まで避けていたけれど、そんな風に過去にしがみついているのはわたしだけなのかもしれないと、今は思うから。

「関谷くんと付き合ったこと、後悔してる?」

 え?と短い声が返ってきてから、少しの間無言が続いた。