「…佐山君、どうかした?」


黙りこくる俺がよほど不自然だったのか、不思議そうに俺を見上げる雪乃の声で我に返った。


「あ、いや。何でもない。」


そう素っ気なく返す俺。
でもホントに、マジで何でもない。
だって俺が女に、そんな風な気持ちをいだくなんてありえねーだろうし。
きっと今日は、大志が俺にしつこく同じことを聞くせいで、変に雪乃を気にしてしまうだけだ。だからこんな気持ちが渦巻くに決まってる。


「…とりあえず帰ろうぜ。」


話題を変えるようにして差し出した左手。

「あ、うん。」と答えつつ、ぎこちなく俺の手を握った雪乃の手を引き、学校をあとにした。