優しい風が止めどなく吹き込み、部屋を満たす。
雪乃が死んだと聞かされたときも、
葬式に参列したときも流れなかった涙が、
今更になってあふれ出した。
――“そして私に、元気な姿を見せて”
…――会いに行こう。雪乃に。
不意に、漠然と浮かんできたその想い。
半年という時間は経ってしまったけれど、ようやく、向き合う決心をつけることができた瞬間だった。
青い空の下、きっと雪乃は笑ってる。
だから俺は、生きよう。雪乃の分まで。
雪乃と描けなかった未来は、俺が。
雪乃は俺の、心の中でずっと生き続けているのだから――…
そう思えた刹那、吹き込む風に混じって、聞き慣れた笑い声が聞こえてきた気がした。

