…――でも、それなら何で?
『契約』恋愛にしろ、何にしろ、どうして彼には無謀ともとれるような、“1ヶ月”という期間を設定したんだろ?
わからないけど、聞きたくない…。
「なぁ、雪乃。」
不意に呼ばれた自分の名前で我に返る。視線を向けると、佐山君がいつの間にか起きあがり、私の横に座っていて。
「何?」
「本気の恋って、したことある?」
急に、真剣さを帯びた声と真剣さを帯びた瞳で、私にそう問いかけてきた。
――だけど。
したことあるかって以前に、私はそんなのしてはいけない。する資格が、私には無いのだ。

