唇を噛みしめうつむけば、不意に感じる温もり…。その温もりが風春に抱きしめられたせいだと気づくのに、時間にしておよそ一秒。
「…どうしたの、いきなり。」
「特に、意味ないけど。」
「あはっ、真似しないでよ。」
心地よい温もりに、そっと身体を預ける。すると不意に、始まりの日のことを思い出した。
「…ねぇ風春、覚えてる?」
「何を?」
「私たちの、『契約』が始まった日のことだよ。」
あの日はまさか、私たちがこんな関係になるなんて、考えてもいなかったよね。
「あの日、風春は私を、他の女の人と別れるための道具にしたんだよ。酷いよね。」
「あー…。わり。そんなこともあったな。」
バツが悪そうに視線を泳がせる風春を見て、クスリと笑みがこぼれた。

