「…はい、どうぞ。」
「失礼します。」
ゆっくりドアを開けて中に入れば、何事もなかったように椅子に腰掛けている先生。
「そこに座っていいよ。」
促されるまま先生の前にある椅子に腰掛けると、ちょうど先生と視線が絡んだ。
「………2時からだったのに、待たせてしまってすまなかったね。」
「あ、いえ。」
私の顔を見て申し訳なさそうにそう言うけど、そんなことは別にどうでもいい。
ただ、今の私の頭にあるのは、さっきの風春の表情だけ…
「じゃあ早速だが、今後の治療方針について話すよ。とりあえず今まで通りに…」
「先生、あの…。提案っていうか、お願いがあるんですけど。」
話し始めた先生の言葉を遮るように、私は口を開く。
自分の決意を伝えるために。
自分自身が後悔しないために。

