『契約』恋愛


いつの間にか訪れた沈黙…。
その気まずさを壊すために、俺は口を開いた。


「……で、その公園がどうかしたのか?」

「いや、さ。別に公園がどうしたって訳じゃないんだけどね…」


そこまで答えると、ゆっくり俺を捉えた雪乃の視線。切なそうに微笑むと、再び言葉をつなぐ。


「紅葉、見に行きたかったなって…、思っただけだよ。」


何、言ってんだ?
“見に行きたかった”って何だよ?
何でそんな言い方…

ぎゅっと締め付けられる胸。ギリッと奥歯を噛みしめる。


「見に、行こうぜ。一緒に。」


気付いたときにはそう、勝手に言葉が口をついていた。でもそれは、その場しのぎの嘘なんかじゃなくて、心の底からそう思えたことだから。