「雪乃さ、ファーストキスだって言ってただろ? ってことは今まで、誰ともつき合ったことねぇの?」
佐山君があのとき屋上で“『契約』は『契約』だ”と言っていたように、私たちの関係はホントにつき合ってる人たちのようで。
現に今も二人で、屋上でお昼を食べているわけだけれど、まったく居心地の悪さは感じない。
でも。
その質問はできればしてほしくなかった、触れてほしくなかった。
本気で向き合う恋愛なんて、どんなにしたくても、私にする資格なんてないのだ。
それに…
「あるよ、中学二年のとき一人だけ…。」
それは今、思いだしたくもない記憶だから。

