「…今までありがとう。じゃあ私、先に戻るね。」


そうつぶやき、雪乃は俺に背を向ける。
だんだん広がる距離に、俺たちの心も離れていくような気がして…


「雪乃っ!」


追いかけ、掴んだ雪乃の右手首。
その細さに、弱々しさに、思わず手を離してしまった。


「追いかけないで!触らないで!私たちの関係は、もう終わったんだよ。
…――風春なんて、大嫌い!」


そう言って雪乃は、走って屋上を出て行く。追いかけることさえできずに、俺はただその場に立ち尽くした。

痛い、痛い。心が痛い。

恋することが、好きな人に頑なに拒否られることが、こんなに苦しくてツラいことだったなんて、知らなかった。