「…ごめんね、風春。」


再びつぶやかれた言葉も、やっぱり相手に届く訳なんてなく、静かに空気の中に消えていく。

いつの間にか乾いていた涙の跡を、またそっと滴がなぞった。


「私、何やってんだろ…?」


後悔しないために
自分の思うまま生きようとして。

最期の恋は
未練の残らないはずの『契約』恋愛にして。

なのに。

このままならきっと、私は後悔する。
未練だって、残ってしまう。

私は何のために。
どうして今まで生きてきたのだろう。

どうして宣告された余命を過ぎてまで
ダルい身体を引きずってまで
生きているのだろう。
それに、大切な人を欺いてまで、私は何をしたいの?

私なんて大嫌い。

流れる涙を拭うこともしないまま、私はそっと目を閉じた。