『契約』恋愛


『……別に。ただ、無理すんなってこと。
さっきのお前、すげぇ苦しそうな顔してたから。』


携帯から聞こえる穏やかな声に、不覚にも涙が溢れそうになった。

こんなにも私を見てくれているのに

こんなにも私を想ってくれているのに

私はいつか、彼を突き放す。

だから、いらない。
優しい言葉なんていらないんだよ。
これ以上私を、本気にさせないで。
この想いを、そっと静かに封印させて。

風春に涙を悟られないように、無理矢理明るい声で、私は口を開く。


「ははっ。そんなことないよ。無理だってしてない。」


風春に弱音は吐きたくない。
私が無理するしか、苦しむしか、人を傷つけない方法を、私は知らないから…。