『契約』恋愛


「…ごめんね、風春。」


不意につぶやいた言葉は、誰にも聞かれることなく宙に消える。

信じていないわけじゃない。

ただ、風春が好き故に。

やっぱり、先に気持ちを裏切ったのは私。
風春の気持ちだけじゃなく、
自分の気持ちさえも裏切った。

小学生の時、
自分の置かれた状況を知って

中学生の時、
現実の厳しさを知って

周囲との深い関わりを拒み、
大きな秘密を抱いたまま一人を選んだ私。

風春はそんな私の闇に唯一気がついてくれた人。
どんなカタチであれ、私のそばにいてくれた人。

大好き。だから…
近い将来、私は必ずいなくなる。そのときに悲しませないように。

『契約』終了とともに、恋は終わり。何も知らないままでいい。