「……さっきの、私の元彼なんだ。
前、話したことあるでしょ?
彼が…隆介が、私が唯一付き合った人、本気の恋をした人だよ。」
…やっぱりな。予想は的中。
たくさんの聞きたいことが俺の中でひしめく。でも。
悲しげな笑みを張り付けた雪乃に、ヤツと何があったのかを今聞くことが、何だかとても酷に思えた。
未だ口ごもる俺に、雪乃は続ける。
「確かに大好きだった。大好きだった、けど。もう終わったことだから、風春は気にしなくていいよ。」
それだけ言い放たれ、雪乃の姿は家の中に消えていった。
俺は唇を噛みしめ、温もりが消えた手を握りしめる。
俺には知る必要もない、最後の雪乃の表情がそう言っているように見えて、何だかとても悔しかったから…。

