『契約』恋愛


何て声をかけようか迷っているうち、つながれていた手が離された。
急に温もりが消えた手が、何だか妙に寒々しくて。


「…じゃ、今日も送ってくれてありがと。また明日ね。」


今の状況に居心地の悪さを感じたのか、雪乃が俺に背を向け、玄関へと向かう。

でも。

このままでいい訳なんてない。
わからないまま隠されてることが、無性に悔しい。


「雪乃っ!」


無意識に呼び止めてしまった俺の目に、驚いたように振り返った雪乃の表情が映った。

目があったまま、しばし沈黙…。
そらされることのない視線が交錯する中、口を開いたのは雪乃。