「ちょ、あんた帰るって何?……って、雪乃〜?」
凛の私を呼び止める声さえも無視し、カバンをひっつかんで教室をあとにした。
玄関を出たあとは、振り返ることもなく走り出す。
本当は走っちゃダメだけど。
―――そんなことも考えられなくて。
ただ、少しでも遠くへ。
学校から離れたい、この場にいたくない。
苦しいほど痛む胸に。
―――涙があふれてきて。
頬を掠める風が、濡れた涙のあとを冷たくなぞる。 でも何で?何で私は泣くの?
相手は“あの”佐山風春。
『契約』が始まった時点で、こういう事態になることは予想できたはず。 どうせ遊び、ただのゲームだったんだから。

