チャンスだった。
誰もいない教室。
それどころか、学校には今何人の人が残っているのかと思う程だ。
こんなに良いチャンスを逃したら、あたしは一生後悔するだろう。
だが、なかなか言えない。
口が開かない。
何で?
言うべき事はちゃんと考えてきたのに。
「北条、先生、」
あたしはやっとの思いで彼の名を呼んだ。
「何だ?」
「あの…その!」
あたしは北条先生の顔を見て話した。
「どうした?」
北条先生は優しくあたしに言った。
その優しさが、あたしの発言を邪魔した。
それでも、
「1つ、はっきりさせたい事があって、」
あたしはそこで唾を飲み込んだ。



