北条先生は教卓の前に立った。
騒がしかった教室は嘘みたいに静かになった。
北条先生は話始めた。
「ここで皆の顔を見るのも、今日が最後だな。」
北条先生は少し淋しそうに笑った。
その淋しげな笑顔はとても美しかった。
「今日で高校2年生としての1年間が終わるわけだけど、皆どうだったか?
楽しかったか?」
楽しかったか?
その質問に、素直にはいと言う事は出来ない。
沢山の出会いがあった良い1年だったけど。
「皆それぞれに今年がどうだったかの答えは違うと思う。
楽しい事だけじゃなく、悩んだりした時も多かれ少なかれあったと思う。」
確かに、あたしにとってかなり悩ましい年だった。
今日で会うのが最後であろう男のせいで。



