「この校舎に僕が教師として足を踏み入れたのは、ちょうど去年のこの日でした。」
僕という聞き慣れない一人称に違和感はなかった。
普段の俺という一人称をずっと聞き続けてきたにも関わらず。
「その日、この学校の採用試験に合格した僕は、沢山の夢や希望を抱えてました。
皆にどうやって教えていこう、こんな風に接していきたい、そんな何も知らなかった自分は、本当に子供でした。
ですが、全て上手くいくはずはありませんでした。
教師という仕事は、思ったよりもハードで、苦労の多い仕事だと思いました。
そして、どんな職業であれ、働くという事は、こういう事なのだと痛感しました。
そんな時、僕が皆と同じ高校生だった頃に、担任の先生から言われた言葉を思い出しました。
苦労はやりがいに比例する。だから世の中は、最終的には多く苦労を重ねた者が勝つんだ。
その当時、僕はその言葉の意味をあまり理解出来ませんでした。
楽して幸せになる事、思わぬ幸運が降って来るような事が世の中にはあると思い込んでいたからです。
でも、僕はその言葉の意味が分かるようになりました。



