元カレ教師



木下先生は深い礼をした。


拍手が湧き起こった。


体育館が揺れているのではないかという程。


あたしも思いっきり拍手をした。


「木下先生!」


どこからか低い男の子の声がした。


木下先生は声の方向を見た。


「ありがとうございました!」


同じ低音が響いた。


そのすぐ後に、あちらこちらから同じ言葉が聞こえた。


高い音も低い音も


まるで一つの合唱のように体育館に響いた。


その練習も打ち合わせもない一体感は、体育館を暖かくした。


柔らかく、暖かい空気に包まれた体育館は、優しさの塊に思えた。


木下先生は涙を流した。


そしてマイクを放す前に


ありがとう。


鼻を啜りながら言い、もう一度頭を下げた。