「おはようございます!」
刹那、おはようございますという大きな声が聞こえた。
体育館にいる皆の声だった。
木下先生は、予想を超える返事の大きさに、笑みがこぼれた。
「私がこの学校で皆と接する事が出来たのは、本当に短い時間でした。
ですが幸いにも、私は体育の教師という他の教科よりも教員の先生方が少ない教科を担当する事が出来た為、沢山の生徒と接する事が出来ました。
私社会人としてまだまだ未熟です。
教師という皆さんに教える立場でありながら、私が皆さんに伝えられた事は少なかったと、今になって思ったりもします。
寧ろ、短い期間に皆さんから学んだ事、気付いた事の数を数えれば、枚挙に遑がありません。
私でさえ、こんな風な感じですから、皆さんもそうだと思います。
家族、友達、部活の先輩後輩、学校や習い事の先生方、
皆さんには、沢山の事に気付かせてくれる人が周りにいます。
私は皆さんに、そんな周りからの情報や何気ない事も含めて、様々な考え方の出来る人になってほしいです。
こんな偉そうな事を言っておきながら、こんな事を考え始めたのはごく最近です。
そしてもっと早くに気付きたかったと後悔しています。
だから、皆さんには出来るだけ早くこの事について考えてほしいです。
長い話でご免なさい。
最後になりましたが
密度の濃い、素敵な時間をありがとうございました。」



