「まだ誰にも言ってないのに、もう広まってるんだな。」 少しの沈黙の後に北条先生が言った。 あたしは斜め上にある顔を見て言った。 「学校っていう情報網を侮ってたら、痛い目見ますよ。」 先程の北条先生と同じような笑顔で答えた。 「だな。」 北条先生は目を伏せた。 「じゃあ。 もう遅いし、気をつけて帰れよ?」 北条先生はあたしのさようならも聞かずに去ってしまった。 何かから逃げるようだな、とあたしは感じた。 あたしはそのまま下駄箱で靴を履き替えた。