「北条先生、間違ってたらご免なさい。」
あたしは目を合わさずに言った。
「先生が転勤するって聞いたんですけど。」
「そうか。」
彼は用意してたかのように言った。
まるであたしをはぶらかしているようだった。
「本当なんですか?」
騙されない。
あたしの口の聞き方はそんな感じだったかもしれない。
「本当だ。」
北条先生は笑顔を崩さずに言った。
嘘か本当か分からないくらいに。
だけど、分かった。
本当なんだ。
本当にここからいなくなっちゃうんだ。
あたしは何も言えなくなった。
また無声映画の世界に戻った。
音も人気もなかった。



