下駄箱まではもう少しだった。 あたしは前に進んでいた。 だが 「北条先生…」 廊下の反対側から、長身の男が向かって来た。 向こうもあたしに気付いた。 「おぅ! 滝沢!」 北条先生は下駄箱の近くまで来た。 「自習してたのか?」 「はい。」 「そうか。」 感心だな、そう言って彼は笑顔になった。 暗いから、その笑顔は見えにくかったが。 「あの…」 「うん? どうした?」 「えっと…」 あたしは目を伏せた。 何でもないです。 そう言う事はできなかった。