そうやって1階に降り立った時、あたしは不意に足を止めた。
人がいた。
俯いていて、髪が顔にかかっていたのではっきりとした表情は読み取れなかった。
だが、明らかに悲しそうだった。
右手でぎゅっと鞄を握りっていた。
速足だが、何処かに錘がついているような足取りだった。
あたしは茫然と彼女が通り過ぎるのを見た。
その少女が通り過ぎると、あたしは何もなかったかのように下駄箱に向かった。
もしかしたら、またあの少女に逢うかもしれない。
否、逢う確率は非常に高い。
だけど、何故か逢わない気がした。
あたしはゆっくりと歩いていた。



