「じゃあ、何だろう…」


歩きながら、考えてくれる阿紗子。


「あ、別に大した事ないよ。」


「嘘でしょ?」


スッとあたしの目を見る阿紗子。


目を反らしたあたし。


「ほら、目を反らした。」


「だって!」


いきなり目を見られたら、反らしたくもなる。


あたしはそう言おうっした。


「何があったか、聞いてもいい?」


「…」


言えない。


まだ言うには早かった。


あの話が事実か、まだ分かってはいない。


「…まだ聞かないで。」


あたしは正直に言ってみた。


「そっか。」


阿紗子は割りとあっさりと言った。


一言付け加えて。


「でも、限界っぽいなって思ったら無理矢理聞くから。」


「…うん。」


あたしは頷いた。


雲はまだ陽を隠していた。