「妃奈、帰ろう!」
終礼の後、未来がいつものようにやってきた。
「あ、ご免。
今日は先帰ってて。」
「何か先生に呼ばれたの?」
「うん。
ちょっとね。」
「そうなんだ…
待っててもいい?」
「うーん。
ありがとう。
でも先に帰ってて。
何時になるか分からないし。」
「分かった。
じゃあ、また明日ね。」
未来に手を振ってから、あたしは常田君を見た。
教室から人がいなくなるのを待っているようだった。
あたしは自習するフリをして、教室に人がいなくなるのを待った。
暫くして、教室にいるのは二人だけとなった。
「滝沢さん、どうだった?」
「あたしは、879。
…常田君は?」
聞くのに恐怖を感じている自分がいた。
英語で負けたことによって、完璧に自分が負ける気がした。
「俺は…867点。」
常田君はそう言って、柔らかく笑った。



