「その、ご免なさい。 怖かったよね?」 「あ、大丈夫だよ。」 「だけど、本当にご免。 卑怯だよね、複数で1人を囲んで、それも先輩にさ。 大丈夫?」 「本当に大丈夫だよ。」 そう言うと、山野さんはあたしにハンカチを差し出した。 「え?」 ハンカチ? 何で? 「良かったら使って。」 …? 「涙、出てるよ。」 「え!!」 あたしはここで初めて気付いた。 あたしは指で瞼の下をそっとなぞる。 湿った感触を指ではっきりと感じた。