「それから少し、あたし達は会わないようにした。
流石にね、あれだから。
それから、彼の方から連絡があったの。
彼女と別れたって。」
木下先生はコーヒーカップを手に取った。
「それで、彼はあたしに聞いたの。
自分と付き合うかって。
予想外よ。
どうしてくれるんだ、とか言われると思ってたからね。
でも、あたしは迷わずに付き合ってって言った。
…何でそう言ったのか、今のあたしには全く理解出来ないけどね。
それであたし達は見事なカップルになった。
何処に行っても目を惹く2人になった。
だけど…そんな事からくっついたあたし達だから、長く続かなくってね。
すぐに別れた。」
…暫くして、彼女はコーヒーカップをテーブルに戻した。
「以上。」
後悔は目から全身に行き渡っていた。
「何か聞きたい事ある?」
「えっと…」
刹那、あたしは目を右から左に動かした。
聞きたい事
この話から一つ芽生えた疑問だった。
だが、聞いてもいいのだろうか?
というのも、全身から後悔を滲ませている人に聞くには、少し残酷過ぎる疑問ではないかと思ったからだ。



