元カレ教師



清らかとは言えない感情があたしの中を支配した。


そう、同じ闇みたいな色でも、夜の空みたいに純粋なものじゃない。


汚れきった沼の色。


自分でも分かった。


でも同時に、抑制作用としての働きを脳が行なっていた。


木下先生は知らなかったんだ。


その時の彼に彼女がいたこと。


そうだよ。


あたしは自分の手を握った。


爪が食い込んで少しばかり痛かった。


あたしはやっと思いが鎮まった。


「あたしは、…本当に性格悪いわよね。
勝ったって思った。
それまでの自分や、彼にあった何か強固なものに。
でもその後に、あたしは何で彼があんなに頑なだったか分かった。
その時彼女いたのよ?」


その彼女が目の前で話している人物だとは思っていないのだろう。


だが、もう暗い気持ちは出てこなかった。


木下先生の目は、後悔の色に帯びていた。