「…」 「滝沢、鏡見ろ。」 「…」 あたしは黙ってテーブルの上の鏡を手にとった。 酷い顔だった。 目に涙いっぱい溜めて、明らかに泣くの我慢してますみたいな顔だった。 あたしは鏡を元の位置に戻した。 その時あたしはハッとした。 それは、あたしが昔買った鏡だった。 あたしは震えている手から鏡を放した。 「心配かけて、ご免、なさ…」 言葉は出なかった。 その代わりに、泣き声だけが部屋に響いた。