彼女の嘘と俺の嘘



『髪の毛がときどき挟まって痛いんだ。絶対弁償させてやる』


シバ> おぉ~コワ…ブルブル


『サキを怒らせたら怖いぞよ』


シバ> ぼくはサキの性格を熟知しております

 “おれ”より“ぼく”という代名詞が板についてきた自分を“おれ”は恥ずかしく思わなくなってきていた。


『シバは最近、なにか怒ったことないの?』


 おれはキーを叩いて返事をしようとしたのに、画面上に文字が打ち出されてこなかった。


 色々なキーを押しても変化はなく、完全にパソコンがフリーズしてしまったらしい。