すれ違いざま、おれの肩をそのサラリーマンの肩にぶつけた。 接触する程度だと意味がないので、故意だとわかるように力を加えて当てた。 サラリーマンは当然のごとく不快な顔をさせ、おれは存在に気づいてくれたうれしさで自然と笑みがこぼれる。 “なんだ、コイツ?”という心の声が読めるような表情をさせながらサラリーマンは離れていった。 そのときは満足感を得られたが、冷静になると実験したことを後悔した。 犯罪への第一歩になってしまうんじゃないかという思いが駆け巡ったからだ。