山口に声を掛けてきたのは、同じく新宿中央署警部補の安川紳一だった。


「ここ、夜間は人が少ないからね。害者も油断してたんだろうな」


「俺もそう思う。……検視官はもう来た?」


「まだだよ。もうすぐ来ると思うけどな」


 山口がそう言い、


「紳ちゃん、コーヒー飲む?」


 と訊いた。


「ああ。冷たいの一本くれよ。もちろんブラックで、な」


「分かった」


 山口がそう返し、自分と安川の分の缶コーヒーを買いに近くの自販機へと駆け寄った。


 コイン挿入口に五百円玉を一枚入れて、自分用には砂糖入りのコーヒーを一本買い、安川にはブラックを一缶買う。


 お釣りを取って、現場(げんじょう)まで歩いていく。