今の私に分かることと云えば。 “彼”が消えてしまったことと、 それから…… 毎晩、鏡の中の常闇で私の左手首が這いずり廻ること。 おそらく“彼”が最後に云った台詞は 『僕には帰る場所がない』 だったのだろう。